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奇跡の実話とミニマリズム 映画「ハドソン川の奇跡」の感想【ネタバレ・考察】

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ハドソン川の奇跡 感想

流行語大賞待ったなし!「衝撃に備えて」

 

 

クリント・イーストウッドの手腕が光る最新作「ハドソン川の奇跡」。彼の作品は初めてだったのですが、まぁ完成度が高いのなんの。最高の奇跡をそのまま、100分いかない尺でストンと落とし込む監督の手腕に「これが映画界の巨匠が作る映画か…」と感心させられてしまいました。深い余韻を楽しめる、技巧派な作品でした。

 

※今感想はハドソン川の奇跡のネタバレも含みます。

 

 

10秒でわかるあらすじ

舞台は2009年のアメリカ。ニューヨーク初シアトル行きの飛行機を操縦する機長の"チェズレイ・サレンバーガー"氏は空港を離陸直後にバードストライク(大量の鳥と衝突してしまう現象)に遭い、両翼のエンジンの出力を失ってしまう。

前代未聞の低高度での出力停止にも慌てることなく管制塔と連絡をとる機長は進行方向の直線上にあるテターボロ空港への着陸を指示。しかし機長は高度が低すぎることから空港への着陸は不可能と判断。ちょうど目下を流れていたハドソン川への着水を試みる。

一歩間違えば着水時に機体が真っ二つに割れ、全員死亡も免れないこの判断だったが、機長と副機長の冷静なオペレーションにより、着水に成功する。着水後も機長の判断、CAらの迅速な指示により、搭乗者全員が生還。当時の州知事がこの件を"ハドソン川の奇跡"と称し、操縦士等を祝福した。

最悪のトラブルを乗り越えたサレンバーガー機長だったが、その後彼に課されたのは"容疑者"という汚名だった。

 

ハドソン川の奇跡の感想 ~温かい感情と冷たい論理~

この話は絶望的な状況を冷静かつ大胆な判断で切り抜けたというまさに奇跡の物語なのですが、その機長にはなんと事故調査員から"容疑者"という汚名が着せられてしまいます。「データ上では、空港に着陸することもできたのに、意図的に着水し、搭乗者らの危険を招いた」と。最初はなんと非情なのか!!と噴飯ものの思いでした。彼は155人の命を救ったのに、なぜ疑われるのか?数字だけじゃあわからないことがあるじゃないか、と。

しかし、NTSB側の主張も分からなくはないというのが難しいところ。なぜなら我々は事件の当事者ではないから。当事者ではない以上、どれだけその現象が凄惨なものであったとしても、こちらが用意できる客観的な尺度は数字だけ。

数字で考えなければならない以上、そこに不備があれば突いてしまうのが人間。観客として事故の現場にもある意味直面することができている僕らからすれば、機長に感情移入してどうしてわかってくれへんのや…という気持ちにもなるけれど、当の調査員らはその壮絶さを知ることはどうあってもできない。

結局コンピュータの記録ミスということが判明して調査員も機長の判断を賞賛しますが、実際にそのデータの誤りが判明しなかったらどうなっていたでしょう。きっと調査員も煮え切らない態度で「じゃあ仕方ないな」という態度で事が進んでしまったのではないでしょうか。人の心は難しいものです。

 

作品から感じられるミニマリズムの精神

今作は上映時間が90分と、非常にコンパクトに作られています。実話がベースの作品は尺が長くなりがちなイメージですが、今作は映画の中でも短尺の96分。

監督はこの最高の実話を最高の形で表現するためにあえてコンパクトに纏められてたのではないかと思っています。筆者は今作を鑑賞後、決して衝撃的とかではないけども、じんわりと胸に広がっていく深い余韻を感じることができました。

起承転結の波が大きいわけでない作品だからこそ、長すぎるとダレてしまう。削りに削った末に生まれたこの深い余韻。音楽や演出も最小限に抑えられていて、あくまで事実を淡々に、進行させていく。

だからこそトム・ハンクスをはじめとしたキャストの人間味溢れる演技が光る。最低限必要なものしか配置しない、見事なまでに"より少なく、より良く"を体現している映画だな、と感じました。

 

みんな生きててよかった

ハドソン川の奇跡 ネタバレ

飛行機が川に着水し、今か今かと救助を待つ…。季節は真冬。ともすればパニック映画にも振れそうなこの題材。そして「オレはこんなところで待ってられねぇ、先に行くぜ!!」と一人真冬の川を泳ぎだす男性。それに乗じたふくよかな体躯の女性。

この二人が死亡フラグビンビンでみんな生還すると前情報で知っていなからもハラハラしました。ホラー映画やパニック映画なら真っ先に死んでいるキャラです。でも最終的には引き返しておとなしく救助の手を借ります。死ななくてよかった。

でも自分があのシチュエーションに直面したら目と鼻の先に陸地があるんだし、無茶しそうな気持ちもわからなくもありません。みなさんも気をつけましょう。

 

結末/ラスト

容疑者の疑いをかけられたサレンバーガー氏の公聴会が始まった。NTSBは同状況下での2人のプロ操縦士によるシミュレーターを公開し、着陸は可能だったと主張します。しかし、彼はこのように反論し、劣勢の雰囲気を一変させます。「このシミュレーションには、"人的要因"が全く考慮されていない」と。

「そのシミュレーションはバードストライクが起きた直後に着陸体制に移動し始めているが、実際にバードストライク直後に最寄り空港への着陸を判断できる状況なのか?前例もない事態だというのに」実際に機長は出力停止後も様々なリペアを試みたりして、直後に着陸の判断を下すことなど不可能。

さらに”そのシミュレーションを何度操縦士に練習させたのか”と機長が問うと"17回"との返答。その回答にざわつく会議室。そこで機長は「人的要因を考慮してバードストライクが起きてからある程度の時間経過後に操縦を開始させてほしい」と提案。調査員は提案を受け入れ、再度シミュレーターが開始。すると今回は二人の操縦士いずれも墜落=失敗。

調査員は面食らった表情になりながらも、事故当時のボイスレコーダーの再生に移る。壮絶な一部始終を聴いてしまった調査員等は呆然。機長は副機長を連れてしばしの休憩。廊下で彼らは「自分たちはよくやった」とお互いを褒めたたえます。その通りと全力で言いたい。

彼らが戻ると調査員から事故の報告が入り、彼らの過失は完全に晴れてなかったことに。容疑者として疑われた際のデータはコンピュータの記録ミスによるものでした。

調査員が彼らを褒め称える中、一人が「もし同じような事件が起きたらどうしますか?」という質問をすると、副機長のスカイルズは「次は7月に起こすよ(事件発生時は1月で極寒)」とジョークを言い、場を沸かしたところでエンドロールへ。めでたしめでたし。

総評:「いい話を見た」余韻に全力で浸れる映画

何のツッコミどころもないくらいに、奇跡的な実話がベースなので、「みんな助かってよかったなぁ」という月並みな感想に集結しますが、まぁそれでいいのかな、とも思います。だっていい話だし。

絶望的な状況から皆が助かる映画はやっぱり感動してしまいます。今作でクリントイーストウッド監督の実力は十二分に味わったので「ミスティック・リバー」から観てみます。

 

ハドソン川の奇跡がオススメな人

 

ハドソン川の奇跡が合わなそうな人

  • ハリウッド映画が大好きな人
  • 静かな映画は寝てしまう人
  • ラストにでっかいカタルシスがほしい人

 

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