起承転結また転結!映画「SCOOP!」の感想【ネタバレ・伏線考察】
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何者にもなれなかった中年パパラッチ。彼が最後に見た景色とは。
10月1日に公開された映画「SCOOP!」の感想です。普通に主演の福山雅治がかっこいいので、影響されやすい筆者は鑑賞後福山雅治の真似をして気だるそうに新宿の町を闊歩してました。しばらくして福山雅治じゃない自分がやっても単純にダサいだけということに気づいてやめました。早々に気づけて良かったです。
※今感想はSCOOP!のネタバレを含みます。
- 10秒で分かるあらすじ(ネタバレ)
- 粗っぽい登場人物紹介
- 映画「SCOOP!」の感想 ~予告の妙でハラハラドキドキ~
- パパラッチを量産していく前半のテンポが楽しい
- 死をもって伝説になったカメラマン
- エロシーンのBGMが恥ずかしい
- リリー・フランキーやばい
- 静と定子の賭けは定子の勝利に終わった。つまり野火は…?
- SCOOP!の結末/ラスト
- 総評:派手なイメージとは裏腹に考えさせられる一作
- SCOOP!がオススメな人
- SCOOP!が合わなそうな人
- オススメ映画セレクション
10秒で分かるあらすじ(ネタバレ)
芸能人のパパラッチの撮影で生計を立てている中年フリーカメラマン、都城 静(みやこのじょうしずか)。
過去は芸能人のスキャンダル写真以外にも事件画像など、様々な撮影に携わっていた彼のもとに、SCOOP!出版部から新人記者の育成を頼まれる。新人記者の名前は行川 野火(なめかわのび)。まだ記者としてペーペーだったが、静は渋々承諾。
様々なパパラッチを撮影していく内に次第に仲を深めていく。徐々に出版部数を伸ばしていくSCOOP!編集部は静に"ヤバいネタ"の撮影を依頼する。
最初は怖気づく静だったが、野火に発破をかけられた静は撮影を決意。彼らは、最低で最高のパパラッチを収めることが出来るのか。
粗っぽい登場人物紹介
中年フリーカメラマン。無類の女好き。ロバート・キャパにあこがれている。
行川 野火(なめかわのび):二階堂ふみ
静とコンビを組む新入り記者。初登場時はメイクが異常なほどに濃く、正直見るに耐えなかったがどんどん薄くなっていく。メイクする時間がなくなったのだろうか。そっちのが良い。
横川貞子(よこがわさだこ):吉田羊
「SCOOP!」の副編集長。馬場と次期編集長のポストを巡って闘争中。静の元パートナーであり、元カノ。
馬場(BABA):滝藤賢一
「SCOOP!」の副編集長。横川と次期編集長のポストの座を争う。静とも過去に仕事をしたことがある。
チャラ源(ちゃらげん):リリー・フランキー
静と旧知の仲。ひょろひょろだが、めちゃくちゃつよい。ヤク中。すごくこわい。
映画「SCOOP!」の感想 ~予告の妙でハラハラドキドキ~
個人的にこの映画は予告にやられました。というのも、予告編のおかげで起承転結の転結の部分を二度楽しめた気分になったから。一粒で二度美味しい状態!メインはあくまで袋とじということでしょうか。粋な演出!
映画観で何度か予告を目にしたのですが、この予告の構成がとっても上手い。
この予告では最初の転結にあたる部分をあたかも物語のヤマのように配置しています。クライマックスのシーンの挿入はわずか1カットのみ。そのクライマックスシーンで中心となる人物の描写もほとんどありません。
これでは最初のクライマックスシーン(殺人犯の撮影)が物語のヤマであると考える人がほとんどのはず。
殺人犯の撮影を無事に成功させ、雑誌の売れ行きも過去最高を更新。めでたしめでたし…で物語が終わるのかと思いきや、静の友人のチャラ源(リリーフランキー。演技がヤバい)が暴走。なんとか彼を落ち着けようと、静は説得に向かう……というのが物語の本当の山場。前半のシリアスでありながらもどこか肩の抜けた雰囲気、一瞬も気を抜けないサスペンスに一変します。
あえて本当の山場を隠した予告の妙。大根監督、やります。
パパラッチを量産していく前半のテンポが楽しい
前半はナイスなコンビネーションでスクープを連発していく静と野火のスピード感が最高にキモチイイです。タッグ結成当初こそグダグダでしたが、場数を踏むに連れて野火のレベルが上っていき、完全に静の右腕に。
パパラッチの手法もリアリティがあって「こんなやり方で撮れるんだ!」と感心。SCOOP!を観た後はなんだか無性に写真が撮りたくなりました。笑
カーチェイスのシーンは「あれ、これワイルド・スピード?」と思うくらいのスピード感とカメラワークで監督の懐の広さを感じました。事故らなくてよかったね。
野火が修行を始めたばかりの時期に放った「最低ですねこの仕事!」が仕事を重ねて「最高ですねこの仕事!!」に変わったときにはムフフと笑みを浮かべてしまいました。人の不幸はどうしてもこうも美味いのでしょうか。
死をもって伝説になったカメラマン
静は野火と話す中で「いつか何者かになるだろうと思いこんでた」と自分の人生を振り返ります。カメラを持って、表現し続けていれば、何者かになれるんだろう、と。
しかし、気づいたら年ばかりを重ね、カメラがないとなにもできないだけの人間になっていた。エースカメラマンになっても、何を撮っても、自分は思い描いてた"何者か"になることはできなかった。
そんな彼が最後になって、自らの命を賭した作品が一躍有名になるという皮肉にも感じるこの演出。なんとも理不尽で救いのない話ですが、彼にとっては優秀の美を飾ることができたと言ってもいいのかもしれません。
http://toyokeizai.net/articles/-/12722
劇中で静が野火に見せたロバート・キャパのこの写真が彼の最期を予言?していたというニクい演出。やってくれますぜ。。。
エロシーンのBGMが恥ずかしい
プロローグからいきなり挿入される車内でのS◯Xは面白かったのでいいです。だが静feat.野火オメーらはだめだ。いや別にあの絡み自体が許せんとか気持ち悪いとか言うわけではない。
許せないのはBGM。なんだあの甘美すぎるBGMは。場末のバーか。あのBGMのおかげで興奮できるシーンがただただこっ恥ずかしい思いを抱くだけで終わってしまったよ。なんのイメージビデオですかあれ。
リリー・フランキーやばい
とりあえずやばい。予告で全然出さなかったあたりがやばい。予告がやばい。
静と定子の賭けは定子の勝利に終わった。つまり野火は…?
こういう伏線もちゃんと回収してくるからニクいです。
SCOOP!の結末/ラスト
殺人犯のスクープ写真を激写し、ついに一つになった静と野火。幸せの絶頂の翌朝、チャラ源から静に電話が。チャラ源は娘に会わせようとしない嫁さんとのいざこざでついに頭がどうにかなってしまい、チャカを片手に暴走してしまった。
「オレのかっこいい写真を撮ってヨォ〜〜っ」と呼び出された静は一人チャラ源と合流し、警察の囲い込みのためになんとか時間を稼ぎながら、チャラ源の機嫌を損ねないように撮影を続ける。
順調に見えたが、単調な撮影に徐々に機嫌を損ねていくチャラ源。そこに二人の様子を撮影していた野火の姿が目に入る。野火を見つけたチャラ源は「オレのカメラマンは静だけだぁあぁあ」と激情し、チャカを野火の元に向ける。臆せずカメラを向け続ける野火。野火に向けられた銃口を必死の思いで逸らす静。しかしその銃口は静の方を向いてしまう。
その刹那、静は目で野火に合図を送る。"撮れ"と。野火はシャッターを切る。連射になるよう、押し続ける。その瞬間。銃の引き金が引かれてしまい、静の額を弾丸が貫く。静は自身がカメラマンになるきっかけとなったロバートキャパの写真と同じように、凶弾に倒れてしまうのだった。
後日。野火が撮影した写真は編集長となった定子により雑誌への掲載が決まる。"静が最後に愛した女"としてその写真の原稿を涙を流しながら仕上げる野火。原稿:行川野火 撮影:都城静として公開された「人生をかけた一枚」はベストセラーとなった。
時が経ち、野火は静が残したフィルムカメラをお守り代わりに、別のカメラマンと共にスクープの撮影に勤しむのであった。
総評:派手なイメージとは裏腹に考えさせられる一作
主演の福山雅治は無精髭にアロハシャツを合わせて、花火が上がって、部数も上がって…と一見東京の夜の街のリアルを描いた派手な作品に見えますが、ジャーナリズムの倫理や理想の自分と現実の乖離など、考えさせられるような材料もある、とても示唆に満ちた映画だと思います。
伏線の張り方とか細部の設定とかも凝っていて2回観ても全然飽きずに楽しめるのではないでしょうか。純粋にエンターテイメントとしての質も最高レベルだと思いますし。ラストのリリー・フランキーの暴走は若干賛否が分かれそうですか、筆者はこれまで書いてきた通り、大絶賛派です。物語に深みが出たし、演技自体が狂気に満ちていて最高でした。
SCOOP!がオススメな人
SCOOP!が合わなそうな人
- いつもどおりの福山雅治が見たい人
- 下世話話はNGな人
オススメ映画セレクション