【感想】映画「何者」がホラー映画な理由を考えた【ネタバレ・考察】
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就活生に送る戦慄ホラー。この恐怖は、他人事じゃない。
豪華キャストを携えて、ついに映画「何者」が公開されました。
原作を就活中に読んだ筆者は終盤でまさに背筋が凍る思いをしたのですが、このどんでん返しを如何に映像で表現するのか、すごく楽しみにしていた者の一人です。やっぱりめちゃくちゃ落ち込みました。なんかもう息苦しさしかない。
年代とか、使ってるデバイスとかで今作は相当賛否が分かれそう。筆者は刺さった方です。この感想は客観的な視点を排して刺さった側として書きます。
※感想はネタバレを含みます
原作との違いを書いたこちらもどうぞ。
- 10秒でわかるあらすじ
- 粗い人物紹介(キャスト)
- 映画「何者」の感想 ~就活が舞台のサイコホラー~
- 映画「何者」がホラーな理由 ~裏切りの深度~
- 映画「何者」の結末/ラスト【ネタバレ注意】
- 拓人の就活二年目を示唆する伏線
- 総評:20代前半は必見!小説も必読だ!
- 「何者」がオススメな人
- 「何者」が合わなそうな人
10秒でわかるあらすじ
主人公の拓人はルームメイトの光太郎と暮らす就活中の大学生。
就活を目前に迎えたある日、マンションの上階に友人の瑞月(有村 架純)の友人が住んでることが判明。
瑞月の友人の理香も同じく就活を控えており、4人は就活共同戦線を組むことに。頻繁に理香の家に集まるようになる。理香は同い年の彼氏、隆良と同棲していたが、彼は就活に批判的で就活に取り組む4人を空々しく眺める。
冷静な分析家、何も考えていないように見える元バンドマン、地味系女子、意識高い系、就活批判クリエイター。個性豊かな6人は、就活戦線をどう生きるのか。彼らは「何者」かになれるのか。
粗い人物紹介(キャスト)
拓人(佐藤 健):中央上
いつもTwitterで誰かをウォッチしている、コミュニケーションに若干の難があるイケメン。演劇部で鳥丸ギンジと切磋琢磨していたが、ある日決別。光太郎とルームシェアをしている。家賃高そう。
光太郎(菅田 将暉):中央下
拓人とルームシェアをしているバンドマン。過去に瑞月と交際していた。音楽系の業界に進むものかと思われていたが、頑なに出版社を志望する。
瑞月(有村 架純):左上
入学したばかりの飲み会で拓人と光太郎と仲良くなる。留学経験があり、留学者向け就活セミナーで理香と知り合う。めっちゃかわいい。
理香(二階堂 ふみ):右上
名刺作ったり、たくさんOB訪問をしたりと、意識の高さが空回りしていて見ていて辛い。スタバでドヤ顔Macはしなかった。
隆良(岡田 将生):左下
就活否定派筆頭。「これからは個の時代だよ」と、まさにテンプレ的なことを物々しく言うクリエイター。愛用のメガネはオリバーピープルズ。
↑こちらのモデルです。かっこいい。
サワ先輩(山田 孝之):右下
拓人のバイト先の先輩。来年から大学院に進む。落ち着きすぎててこわい。
映画「何者」の感想 ~就活が舞台のサイコホラー~
もうね、めっちゃ恐い。就活経験者は分かる、この空気感。SNSがもたらした人間の暗部をこれでもかと見せつけてくる、ほんっとーーーーーに恐ろしい物語でした。
恐ろしいと同時に、この恐ろしさは救済になりうるとも感じました。こちらに関しては別の記事でまた書こうかなと思います。
さて、「何者」はよくホラーと言われることが多いですが、この物語から感じる怖さは、「リング」のようなストレートなホラー映画でもなく、「サイコ」のように人間の狂気が色鮮やかに表立つものでもありません。まぁ就活が舞台ですしね。。
何者から表出する恐怖、それは触れられたくない心の闇をこれでもかと抉ってくるところにあります。
誰もが思っているけれど、誰にも言えない奥深くにあるもの。それをぐっさぐっさと突き刺してくる怖さといったら…。一番恐いのは人間とはよく言ったものですな。
映画「何者」がホラーな理由 ~裏切りの深度~
「何者」は刺さる人にはしばらく立ち直れなくなるくらいに刺さる作品ですが、分からない人には絶対にわからない作品です。
劇中の「サワ先輩」のように達観している人だと、「なんだか内輪でギャーギャーやってんなぁ」くらいにしか感じられないかもしれません。
しかし、刺さる人にとっては、程度によっては死にたくなるくらいの絶望、焦燥を感じるほどの破壊力を持った物語だと思ってます。
「何者」が恐い理由はざっと上述しましたが、その怖さの根源にあるのは「裏切り」にあると筆者は感じました。
今作では主人公はいわゆる"普通の大学生"であるように描かれています。時期に差し掛かり、就活を始める大学生。普通に就活をする人たちのが多いはずなので、大多数の人は主人公の拓人に感情移入してしまうはず。
そこに現れる理香と隆良。頑張りすぎる、いわゆる「意識が高い」人とレールを外れたがる人。ここで就活を経験した、している人は「うwっわ〜〜〜〜〜〜〜〜イルワ〜〜〜〜〜〜〜こういう人、イルワ〜〜〜〜〜〜〜〜」と共感せずにはいられません。
筆者はトランス状態になりました。
「就活あるある物語かな?微笑ましいなぁワカルワカルゥ!!(小並感)」と見守っていると、ある時衝撃の事実が明らかになります。
実は拓人はみんなを応援するふりをしていながら、Twitterの裏アカウントを用いて就活仲間を見下して安心している「観察者気取りのイタい奴」なのでした。しかも就職留年で就活をするのは二年目という。
意識高い系を始めとする人らをこき下ろして優越感に浸っていたコチラ側が実は一番イタイ奴だったという衝撃の事実。それまで、意識高い系の極致をこれでもかと見せつけられていた我々は呆然とするしかありません。原作読んでいた時は本当に呼吸がとまりました。
これまで散々共感していた者に突然突きつけられるナイフ。胸元に突きつけられた”最も触れられたくないモノ”を孕んだナイフ。そのナイフはこれまで育んできたシンパシーが深ければ深いほど、鋭く迫ります。
主人公に共感してきた我々はそのナイフを払いのけることも、堂々と受け入れることもできません。この裏切りの底の深さが、「何者」をホラー映画と呼ばせる所以ではないかと思います。
映画「何者」の結末/ラスト【ネタバレ注意】
※最期のセリフ曖昧です。
目標だった出版系の企業から内定を貰うも、どこか空虚な感じが抜けない光太郎。大手企業から内定を貰い、一応の目標は果たした瑞月。
未だに内定がもらえず、闇の中でもがき続ける理香。「就職したこともないのに偉そうなこと言わないでよ」という瑞月の言葉を受け、就活に望む決意をした隆良。
二年目の就職活動にも関わらず、一向に内定がもらえない拓人。片思いだった瑞月への思いも叶わず、自分の正体を暴いた理香からの鮮烈な口撃を浴び、意気消沈。
それでも拓人は就職面接に望む。
「あなたを一分間で表現してください。……では端のあなた」
「あ……はい。えっと……ぼくは…演劇をしていました」「厳しい演劇にも、粘り強くついていきました」「持ち前の粘り強さで」
……………
「その演劇サークルに、烏丸ギンジというやつがいたんですけど」「ぼくは入学当初からあいつと一緒に脚本作ったりして」
拓人の就活向けに装飾された言葉達が、ボロボロと崩れ落ちていく
「はじめは良かったんですけど」「あいつは自分の頑張りをアピールしたがるやつで」
今まで紡がれることのなかった言葉たちが、時が止まったかのような会議室に響き渡る
「それがすごくサムくて」論理性もなにもない言葉たち。既に5分は経っているのだろうか。
………………
「すいません、一分では表現できません」そう言って、自己PRを閉じた拓人。
面接を終え、オフィスから出ようと歩を進める拓人。主題歌「NANIMONO」が流れだす。映像は彼の後ろ姿しか映さないため、その表情は誰も分かり得ない。
拓人の就活二年目を示唆する伏線
実は拓人は就活留年をしていた、ということが終盤で明らかになるわけですが、それを示唆するセリフや演出は結構あるので勘の良い方はすぐに気づかれるかもしれません。以下に列挙しておきます。
- 瑞月と理香は留学経験者→通常であれば卒業が一年先になる
- 隆良は休学していた
- 光太郎の「拓人せんぱ〜い」という発言
- サワ先輩がES講座の復習をしている拓人に対して「今更そんなもん必要ないだろ」と発言したシーン
総評:20代前半は必見!小説も必読だ!
就活した人も、している人も、就活がまだまだ雲の先にあるようなものでその存在がわからない人も。とにかく、今を20代前半として生きている人みんなに観て欲しいと思える作品でした。
いわゆる"普通の人"にとって、これでもかというくらいに痛くて、ズキズキと刺さるお話。
ですが、きっとその痛みはただ痛くて辛いだけのものではなくて、何かしらの変化のきっかけを含む、ポジティブな痛みではないかと思います。
なんだかモヤモヤしていたり、他人と自分を比べて落ち込んだり、安心しがちな人は特に「何者」オススメです。
ラスト近くのどんでん返しは本当に辛いものがあるけれど、観終わって、咀嚼した時に新しい一歩のきっかけになるんだじゃないかな、と思います。
原作未読の方、めちゃくちゃオススメです。映画は演者の表情の機微が重苦しい就活の雰囲気を伝えてくれますが、原作は主人公拓人の地の文がメインになるぶん、より”やられた”感が強いです。映画はラストもアレンジされていましたが、個人的には原作のラストのが好きです。
「何者」がオススメな人
- 若者
- SNSにどっぷりな人
- ネットで他人のウォッチをしがちな人(救済になるかも)
- 就活が上手く行ってない人
「何者」が合わなそうな人
- ネットで他人のウォッチをしがちな人(単純に凹む。その先に救いを見いだせるかどうかは自分次第)
- 普段SNSを使ってない人
- オトナな人
原作との違いを書きました。
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