【ネタバレ】それぞれの"怒り" 映画「怒り」の感想、考察【結末】
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日本俳優界のオールスターキャストが送る傑作。殺人犯でも、愛せますか?
渡辺謙、宮崎あおい、綾野剛をはじめとした超豪華キャストが集結した映画「怒り」。の感想、考察です。予告の時点でヤバい臭いがプンプンしてましたが、これが本当にヤバかったです。極上の俳優陣が送る、最高級の演技。これに心を揺さぶられない人はいるのだろうか。筆者はエンドロールが流れ出すや否や涙が止まらなくなりました。上映中はこらえてたのに…。
- あらっぽい登場人物(キャスト)紹介
- 15秒でわかるあらすじ
- 「怒り」の感想 ~俳優陣の鬼気迫る演技に、息を飲まされる~
- 「人を信じること」はあまりにも難しい
- それぞれの「怒り」
- 結末/ラスト
- 総評:日本の俳優の本気を垣間見える傑作
- 怒りがオススメな人
- 怒りが合わなそうな人
あらっぽい登場人物(キャスト)紹介
【東京編】
- 大西直人[綾野剛] 殺人犯容疑者。発展場で藤田と出会い、目覚める。あるいは目覚めていたのか。経歴不詳。
【千葉編】
- 槙洋平[渡辺謙] 不器用な愛子の父。複雑な想いを秘めている。
【沖縄編】
- 知念辰也[佐久本宝] 泉に恋心を抱くDK。泉ちゃんを那覇に連れて行ったことを悔いているが君が飲酒してなかったら多分何も起きなかった。
警察はまぁいっか。
15秒でわかるあらすじ
ある夏の日。八王子で夫婦が殺害される事件が起きた。その現場には、手のひらに付着した血液で書かれたとされる「怒」という文字が残されていた。その犯人は「山神一也」と判明するも逃亡、整形をして1年以上、今もどこかで”普通の生活”を送っているという。
そんな折、東京と千葉と沖縄の3つの舞台で「山神一也」と思しき人物が。
彼ら三人は身元不詳だったり偽名を使っていたり、無人島に一人で住んでいたりと、一様に怪しさ満点。やがてその三人は人生のターニングポイントともいえる人物に遭遇し、それぞれの暮らしを営んでいく。
しかし、彼らのパートナーらは報道で明らかになっていく山神一也の情報を見るに連れて次第に"山神一也似の男"に疑念を抱いていく。
果たして犯人はこの中に存在するのか。彼らと出会う人々は、葛藤を乗り越えられるのか。
「怒り」の感想 ~俳優陣の鬼気迫る演技に、息を飲まされる~
今作の一番の魅力は演技。映画俳優の日本代表、和製アベンジャーズと言っても過言ではないキャストが魅せる凄まじい演技はまさに圧巻の一言。
前半パートではそれぞれが内に秘めた「何か」をその行動、言動全てから感じさせてくれます。愛子ちゃんそんなまっすぐにこっち見ないで。
後半パートでは優馬の涙、愛子の慟哭、洋平の男泣き、泉の叫び。その全てに感情を揺さぶられ、クラクラきます。"疑った側"の人々ももちろん、"疑われる側"の静かに狂気を孕んだ雰囲気も気味悪さMAX。
特に筆者に響いたのは妻夫木さんと宮崎あおいさんの演技。優馬が真実を告げられるシーンは感情の錯綜が静かながらも激烈に表れていて、「やべぇ」と思いました。宮崎あおいさんに至っては終始なにかが取り憑いてんじゃねぇか?ってくらいの狂気を感じてこれまたやばかったです。語彙の貧相さがやばい。
演技でここまで強く感情を揺さぶられるのは初めてじゃないかと思うくらいには響きましたね。ストーリーがありきたりなミステリーだからこそ、俳優の演技がキラリと光る好例を見せつけられたと感じました。
余談ですが「怒り」のストーリーは市橋達也氏が起こした殺害事件から着想を得られたそうです。言われてみると似てますね。無人島生活するあたりとか。
さらに余談なのですが筆者の顔面は市橋達也氏に似ているそうです。実の両親が言うのだから間違いないのですが言ってて悲しくならないのでしょうか。
「人を信じること」はあまりにも難しい
「怒り」の予告編を見ると登場人物全員に殺人犯の疑いがあるようにリードされていて、「一体誰が??」というミステリー要素が強めの印象を受けます。しかし蓋を開けてみると犯人候補は三人だけで、比較的特定も簡単。
観ていただいた方は分かると思いますが、「怒り」はミステリー要素は軽めで、皆の人間ドラマがメインの作品でした。
ではどのようなドラマが展開されるのか?それが冒頭でも書いたとおり、愛する人に殺人犯の疑いがあっても、信じ続けることができるのかということ。
劇中では、おのおのの舞台で殺人犯容疑者と登場人物がゲイカップル、カップル、師弟関係(?)と、ある一定の信頼関係を築きます。
その中で迫り来る「この人は殺人犯かもしれない」という容赦のない疑念。
一度抱いてしまった疑念は払拭されること無い。"信じなければいけない"という思いとは裏腹に疑いは膨らむしかない。人を信じ続けることがこんなにも難しいのか……と、登場人物それぞれの葛藤が重く激しく鑑賞者にのしかかってきます。
それぞれの「怒り」
今作のタイトルである「怒り」。単純に他者や物に対して発散する怒り。愛する人を信じ切れなかった自分自身への怒り。信じた人に裏切られた怒り。誰にも打ち明けられず、やり場のない鬱屈とした怒り。
前半パートでは抑えられていたそれぞれの「何か」が、後半パートで爆発します。その怒りの発露はあまりにも凄まじく、坂本龍一の音楽も相まって美しさをも感じさせます。
結末/ラスト
【沖縄編】
殺人犯容疑者、山神一也の輪郭が様々な情報を通じて明らかになってきた。 辰也が暮らす下宿で働いていた田中はある日、発狂して下宿先の食堂をめちゃくちゃに破壊する。さながら人間版シンゴジラである。破壊したのに、田中は逃亡、再び無人島で隠居生活を送る。
辰也が無人島を訪れ、田中の住処を訪れると、壁面には八王子殺人事件の際の壁に書かれていたのと同じ「怒」の文字が。立ち尽くしていると外でハサミを使いほくろを切り落とそうとしている田中と目が合う。
田中は頬から血を流しながらいつもと同じように辰也と接するが、突如発狂し、辰也を壁に叩きつける。呆然とする辰也をよそに、目をつむり逆立ちをする田中。辰也は壁面に書かれていた「泉が米兵に乱暴されていた。ウケる」という文字を見つけ、激昂。床に投げ捨てられていたハサミで田中を刺殺する。
田中の死後、山神一也が彼だったことが判明するが、辰也は警察に対し「信じていたから許せなかった」としか供述しない。泉が無人島を訪れると、必死になって消そうとした痕跡が目立つ例の文を見つける。泉はやりようのない感情を、沖縄の、透き通った地平にぶつけるしかなかった。
【東京編】
優馬の同僚が立て続けに空き巣に入られていると電話で聞いていると、カフェで女性と談笑している直人を見かける。優馬は直人に疑いの目を向けてしまい、その話題をした翌日に直人は失踪してしまう。
その折優馬は八王子の殺人犯の報道を視聴する。直也と犯人の特徴が酷似していることに気づいた優馬は疑いを隠せなくなりつつも直人の捜索を続ける。
ある日、優馬はカフェで直也と談笑していた女性を見かける。優馬はその女性から、直人の真実を知る。彼は心臓の病を患っており、公園で一人亡くなっていたという。また自分の命が長くないことを悟り、優馬に迷惑はかけまいと失踪していたのであった。彼が身元不詳だったのは、両親を幼少期に失っており、病のおかげで安定した職にもつけないためだった。
真実を知った優馬は一人、声にならない言葉を挙げ、涙を流す。
【千葉編】
愛子と哲也は次第に惹かれあい、同棲生活を洋平に申し出る。戸惑う洋平だったが、二人の強い意志もあり、承諾する。
しかし、八王子殺人犯の情報が開示されるにつれて、哲也と山神一也が酷似していることに疑いを持ち始めてしまう洋平。愛子も哲也は自分の全てを打ち明けてくれたと言うが、どうにも疑念は膨らむばかり。とうとう愛子は哲也に"違うなら、ここにいて"と告げて警察に"山神に似た人物がいる"と通報してしまう。
哲也は翌日失踪してしまうのだが、警察の鑑識の結果、哲也は山神一也ではないことがわかった。哲也は愛子に打ち明けた通り、亡くなった両親の分の借金を掛け持ってしまい各地を転々としているのだった。
ある日、哲也から愛子に電話が入る。"迷惑かけてすみません、もう迷惑はかけません"と。そんな哲也を愛子は引き止め、、連れ戻すことに成功。唯一のハッピーエンド。ずるいぞ!
総評:日本の俳優の本気を垣間見える傑作
押し寄せる感情の波がエンドロールでまとめて押し寄せてきて、涙が止まらなくなりました。彼らが抑えつけていた「何か」を爆発させているときに筆者は「泣くまいぞ」とガッチガチの臨戦態勢をとっていたのですが(みんな泣いてなかったので)、物語が幕を閉じてやっと、こちらが抑えていた思いが発散させられたかのような感覚。こんなのはじめて‥‥ッッ!!
本来なら一つで映画が作れるくらいの社会問題(貧困、LGBT、沖縄など)を詰め込みながらも、ごちゃごちゃさせすぎずにこの短い尺の中に入れ込んだ脚本もすごい。しかもそこらへんは脇役という。あくまで主役は、キャストの演技。
最近映画を観てもなんだか揺さぶられないなぁ‥‥って方は是非観てください!きっと、「怒り」以上の感情に揺れ動かされます。
ぼくが妄想していたストーリー展開を書きました
怒りがオススメな人
- 主演陣の誰かが好きな方(最高峰のパフォーマンス発揮してます)
- 感情揺さぶられたい方
- 綾野剛さんと妻夫木さんの裸体を堪能したい人
- 田中龍三さんの支持者(やっぱ米兵クソだわ)
怒りが合わなそうな人
原作も読まなきゃ(使命感)
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